鳥取県の文化芸術の発展を願って

 文化芸術は、県民の方々に楽しさや感動や慶びなどの精神的名潤いをもたらし、毎日の生活に彩りを添え、人生をより豊かにし、活力ある郷土を切り開いていくエネルギーとなるものです。

 今、全国の公立文化施設は「官から民へ」の構造転換の流れの中、平成18年度から導入された指定管理者制度により、大きく揺れ動いています。また、地方分権といわれながらも、格差社会が進展する中で、設置自治体制における財政状況の悪化も厳しい現状に拍車をかけています。

 
 指定管理者制度の目的である「サービスの質の向上」と「経費削減」による運営は、経営の効率化のみがクローズアップされ、地域の文化芸術を育成するという中長期的な目標を見失う恐れがあるばかりでなく、公立文化施設の本来のミッションを達成できなくなることが予想されます。

 
 もとより、効率的な施設運営を行い、文化的公共サービスの向上を図ることは必要なことでありますが、一方で、文化芸術の振興には、永続的な時の流れのなかで、ひとつひとつの文化を産み育てながら、人と人とを紡いでいくという情報発信と交流の場として、公立文化施設の拠点的役割があり、市場原理や効率性、採算性とは馴染みにくい側面が多々あります。

 
 今後この現状が続けば、自治体の文化行政に大きな負の影響をもたらすとともに、文化芸術振興基本法に定義された「文化芸術の機会を平等に享受し、参加すること」ができなくなることが推測されます。県民への文化的公共サービスの向上を置き去りにした経費削減の偏重、文化事業の継続性や人材育成の長期的視野の欠落など、制度に潜む多くの問題や課題が指摘される中、経営の悪化や公金横領等の理由により、指定管理者の指定を取り消された全国的な事例も報告されています。
 

 本県においても、文化芸術施設を公募によって選定することは、全国の先例に照らして、県民のための文化芸術の育成創造が阻害されるだけでなく、公の施設の信頼性が保てなくなることが危惧され、広く議論されてきました。そして、先ごろ鳥取県議会においても、文化芸術の拠点施設の管理運営は「幅広く検討する必要があることから、現時点で公募に限定するものではない。」との慎重な判断がなされました。
 
 
 財団法人鳥取県文化振興財団は、鳥取市にある「鳥取県立県民文化会館」と倉吉市にある「鳥取県立倉吉未来中心」の2つの文化施設の管理運営と併せて文化振興を行い、県民の方々へ文化的公共サービスを提供しています。平成15年に策定した「改革のための基本方針」に謳っている「人や暮らしや街を豊かにし、誇りある郷土を創ること」を大きな使命として、鑑賞公演事業やアウトリーチ事業、伝承文化を掘り起こす創造事業などを広く県下で実施し、本県の文化芸術の振興に努力して参りました。
 特に、指名指定によって指定管理者となった平成18年度以降、経費の削減に継続的に取り組む一方、開館日の拡大や利用料金の見直しなど一層きめ細かいサービスを実施して、県民の方々に利用して頂きやすい施設運営を進めています。


 文化振興財団は、今後も、文化芸術振興の中核施設である2館の指定管理者として、自身の組織改革への継続的取り組みをさらに着実に実施し、併せてアートマネジメントの専門家たるべき職員の人材育成等を進めて、運営基盤を確固たるものとしていきます。このことを基本に、常に公平・公正で効率的な施設の管理運営を担保するとともに、県民の皆様と協働して「豊かな鳥取県の文化」を創造していくため、文化芸術事業の推進にさらに力強く取り組みたいと考えております。
 

                                 平成二十年七月十六日  

財団法人鳥取県文化振興財団
 理事長 武 田 勝 文

    

理 事  坂 口 育 子

理 事  佐分利 育 代

理 事  白 石 由美子

理 事  田 中 仁 成

理 事  長谷川 泰 二

理 事  長谷川 稔

理 事  平 井 静 子

理 事  古 瀬 美保子

理 事  村 江 清 志

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