改修工事の現場から 第3回

 怒涛のようにスタートした新年度も早1か月が過ぎ、4月の上旬に満開を迎えた桜の木も今ではすっかり新緑を纏い葉桜となっています。この春に就職や進学、異動など環境の変化があった方も、皆それぞれの場所で少しずつ慣れ始めた頃ではないでしょうか。
 ご存じのとおり、世間では新型コロナウイルスが猛威を振るい、感染拡大防止のために東京オリンピックの延期や各種イベントの中止、学校の臨時休校、人の移動制限や物流の遅延などまさに世界的な大問題となっています。また、衣・食・住という日常生活の基本的な部分だけに留まらず、私たちの心に潤いや感動を与えてくれる芸術の分野もその大きな影響を受け、実演家はもちろん企画、制作、運営、管理、更には現場の技術者に至るまで皆が頭を悩ませています。

〜4月の工事について〜

 改修工事の現場でも新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、日々、対策が強化されています。作業員さんの検温、体調管理や入退場時のアルコール消毒の徹底などの基本的なことから始まり、最近では、いわゆる「3つの密」を避けるためテレビ会議の導入が検討されはじめました。この先、新型コロナウイルスの問題がどうなっていくのか誰にも分かりませんが、工事の現場は臨機応変に目標へ向かって動き続けています。さて、3回目となる今回は特定天井耐震対策工事を例に、今後予定されている工事スケジュールをお伝えします。
                                                                                                          
特定天井耐震対策工事 ◇梨花ホール 工事スケジュール(予定)◇

時     期

工     程

     業         

4月中旬〜7月上旬

耐 震 対 策

天井の補強及び落下防止   (※1)

7月上旬〜7月下旬

仮設棚足場撤去

作業で使用した仮設棚足場を撤去

8月上旬〜8月中旬

養 生 撤 去

壁や床を保護していた養生類を撤去

8月中旬〜8月下旬

椅 子 取 付

1990席全ての座席を復帰

9月上旬〜9月中旬

音 響 測 定

ホールの建築的な音響を測定 (※2)

9月中旬〜9月下旬

美装・検査・直し

検査の実施及び掃除や細部の修正

〜 完成 〜



(※1)「耐震対策」:天井の補強及び落下防止
 一般的な天井の構造は骨組みとなるフレームと実際の表面となる化粧ボードに分かれています。まだ、記憶にも新しい東日本大震災が発生した時には、同じような構造をしたホールの客席天井の多くが崩落し、骨組みを残して化粧ボードのみが落下した事例がいくつもあったようです。地震の多い日本はこの教訓をもとに施工や安全の基準を厳しくし、建築基準法を改正しました。梨花ホールでも、骨組み部分を支える支持材の数を増やしたり、建物を構成する鋼材と実際の表面となる化粧ボードそのものとを結ぶように落下防止ワイヤーを取り付けることで、天井そのものが崩れ落ちることを防ぎます。施工計画では、この天井の崩落を防止するための支持材と吊りワイヤーの新設設置点数は優に1000点を超えています。

     〈梨花ホール断面図:天井の落下を防止するワイヤーの施工イメージ図〉

(※2)「音響測定」:ホールの建築的な音響を測定
 新しくなった梨花ホールの音の響き方や長さ、場内の静けさなどを測定することで、設計段階で求められていた音響性能の目標値を満たすことを確認したり、改修工事の前後で場内の音響状態がどのように変化したかなどを比較します。また、今回は耐震対策を実施した天井部分などを中心に建物自体や取り付け器具などが不要に振動したりすることで生まれる、いわゆるガタツキ音やビリツキ音の発生の有無なども入念に確認し、基準を満たさないものは徹底的に防振・静音対策が行われます。

         〈梨花ホール断面図:建築的な音響測定のイメージ図〉

 梨花ホールの特定天井耐震対策工事に関しては、以上のような作業工程を経てリニューアルオープンに向かう予定となっています。また、今回ご紹介しなかったその他の設備の改修や修繕も、作業内容や工程は異なりますが順次作業が進められています。小ホール7月、梨花ホール10月のリニューアルオープンまで今しばらくお待ちください。
                                                         
〜おわりに〜
                                                                                                         
 とりぎん文化会館のような劇場と呼ばれる特殊な空間の裏側を一般の方にご覧いただく機会はなかなかありませんが、そこには舞台演出を生み出すための専用の設備や器具だけでなく、その巨大空間そのものを稼働させるための様々な設備がひしめき合っています。また、さらにそこでは、事業の企画や施設の運営、設備の管理や舞台技術に至るまで多種多様な人達が働き、今まさにコロナウイルスを起因とした諸般の問題に立ち向かいながら、知恵を絞り方法を模索し芸術を創造し奮闘しています。この新型コロナウイルスの問題が一日も早く終息し、経済の復興を中心に普段の活気ある社会や生活に戻ると共に、芸術に触れることで、こころが安らぐそんな平穏な日々に戻る事を願っています。



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