Vol.1 照明さんの職人技をご紹介!

 7月に入り、本来はオリンピックに向けて盛り上がっていくはずの日本は今、新型コロナウイルスという未だかつてない脅威と戦い続けています。倉吉未来中心もその影響を受け、ホールのイベントの延期や中止が相次いでいます。こういうときだからこそ何か出来ることはないかと思い、「倉吉未来中心ホールレター」と題して、舞台やその裏側の魅力を皆様にお伝えします!

 さて、第1回となる今回は、先日行いましたアトリウムのブルーライトアップでも大活躍した照明さんについてご紹介します!


 早速ですが、くまのぬいぐるみに横の照明を当てたい!とします。
そのためには照明器具の向きや角度を変えて照明を動かす必要がありますが、それは大ホールだと高さ7m以上の位置にあるため、手を伸ばしただけでは届きません。

 倉吉未来中心にある照明器具は全て手動で動かす必要があるため、高い脚立に登って手で直接動かす、あるいはブリッジと呼ばれる特殊な舞台機構を使うなど角度を変える方法は様々ありますが、多くの場合は「介錯棒(かいしゃくぼう)」という道具を使用します。これは、別名「竿」とも呼ばれる棒で、アルミ製のものがほとんどです。
介錯棒を伸ばして先端を照明器具にひっかけることで、向きや角度を変え、明かりの位置を動かします。

 このように伸ばした竿を持ち上げて照明器具を調整します。
今回は撮影用に全体を明るくしていますが、実際は調整する照明器具だけ点灯し、それ以外は真っ暗の状態で行います。

 介錯棒を扱うのは見た目よりも難しく、伸ばせば伸ばすほどしなったりしてブレやすいため、繊細な作業が求められます。
また、時間が経つにつれて腕への負担が大きくなるため、慣れるまでは筋肉痛の日々が続きます。

 明かりの位置を調整する際に、前後の動きを前振り、奥振り、左右の動きを下振り(しもぶり)、上振り(かみぶり)といいます。
これは客席から舞台を見たとき、左側を下手(しもて)、右側を上手(かみて)、客席側が舞台前、舞台側が舞台奥ということにちなんでいます。


 「それ、もうちょい上振りで」などの指示を出す人と指示を受け介錯棒を操作する人の二人で作業を行うこともあれば、全て一人で行うこともあります。
プロのアーティストのコンサートなど大きなイベントでは、何人もの照明さんが同時に介錯棒を使用することも。その様子は圧巻です。

 また、位置だけでなく、照明が当たる範囲の大きさを調整する能力も必要です。
大きさの調整も照明器具をひとつずつ直接触って調整する必要がありますが、器具が高い位置のままでは非常に困難です。
そのため、準備時の高さ1mの状態で、実際の高さでの大きさを予測して調整します。
ホールレター担当が挑戦して返り討ちにされた様子。
これでは範囲が大き過ぎますので、もう一度降ろして小さくする必要があります。

手の届く位置まで降ろした状態。たくさんの照明器具が吊ってあります。

 この状態で7mの高さの時の明かりの大きさを一つ一つ予測することは、最初は難しいが経験を積んでいけば出来るようになる、とのこと。
先ほど返り討ちにされた私、これを聞いて“すごい、かっこいい、さすがプロ!”という以外に言葉が見つかりませんでした。

 さて、これまで紹介した大きさの調整や、介錯棒での位置調整を行う一連の作業のことを「シュート」といいます。
明かりの位置と大きさを調整するシュートは舞台準備の中で一番時間をかける作業です。
リハーサル前にシュート、リハーサル後にもシュートで合計8時間や10時間、長い時には照明を仕込んでシュートをしていたら1日が終わってしまった、なんてことも!
この繊細な作業の繰り返しで、舞台照明は作られていきます。
これらを手早く正確に行う様子はまさに職人技と言えるでしょう。
ホールを訪れた際は美しく調整された照明にもご注目ください。

照明に綺麗に収まりました。これで完成です!心なしか笑っている様に見えるような・・・?

 今回ご紹介した照明さんのお仕事は、倉吉未来中心公式Youtubeチャンネルでもお楽しみいただけます。どうぞご覧ください。

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